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| 14days 第6回 シルバー・クリーク(前編) 篠塚 光哉 |
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| ラスト・チャンスからヘイリーまではたして何時間ドライブしたのか?正直まったく記憶にない。朝、出発して明るいうちに着いた事だけはハッキリ憶えているが、途中の景色で印象に残るモノなどほとんど無いし、とにかくひたすら退屈なだけだった。退屈さに拍車をかけるのがレンタカーに装備されている「オート・クルーズ機能」で、一旦スピードを設定するとアクセルから右足を離してもえんえんと同じスピードで走り続けるのだ。初めて使った時こそ「おお!こりゃラクチン!」と喜んだもんだが、よくよく考えれば何の事は無いやる事が一つ減ってヒマが増えただけなのである。無駄に見通しの良いド田舎の国道を、男二人で何時間も何時間もひたすら走り続ける。一定の速度で。拷問と言っても差し支えない状況だが、釣りのためなら仕方ない。CDを山ほど持ってきたのは正解だったのだ。 シルバー・クリークで釣りをする場合、滞在するのはヘイリーかケチャムのどちらかの街になる。事前に得た情報によるとケチャムという街はかなり「アッパー・クラス向け」らしいのでハナから除外、ヘイリーで宿を探す。観光案内所でもらったモーテルのパンフを見ながら何軒かあたってみるが、独立記念日の前日だけあってどこも連泊はムズカシイ。結果、日替わりで別々のモーテルに泊まることになった。 2〜3時間の仮眠をとった後、さっそくシルバー・クリークへと出発した。州道から左折して未舗装の道へと入り、山道をしばらく走ると眼下にシルバー・クリークが見えてくる。車を停めて見下ろすと、森の中を蛇行するシルバー・クリーク全体が航空写真のように見渡せた。
斎藤君オススメのポイントは管理小屋から30分ほど歩いたところで、フロート・チューブ専用エリア(水深があるので決して立ち込んだりしないように!)のすぐ隣だ。シルバー・クリークは「ちょっと大きめの忍野」と言った印象の川で、両岸が葦で覆われていて、水中のいたるところに藻が群生している。着いた時点ではまだ日が高かったので、とりあえずはニンフを結び、ルースニングで狙う。なにしろこの川に住むマス共は魚のクセに学士様ばかりらしいので「なんとなく」釣れる確率の高そうな方法から試した。それにしても呆れるほどの「暑さ」で、ヘンリーズ・フォークよりさらに暑い。川に立ち込んでも少々ぬるく感じるくらいだ。「これだけ暑ければさぞかし魚もへばってるのでは?」という予想の元、「まずは川の中をじっくり観察だ」と思ったが、よく見なくても魚達は悠々と泳いでいる。透明度は非常に高く、魚の泳ぐ様子がイヤになるぐらい良く見える。川底はヘドロ状で一歩進むたびに土煙が水中に舞いあがり、「一緒にプランクトンやなんかも舞っている(斎藤君談)」らしく、それを狙った魚が゛へーきのへーざ"でヒザにぶつかってきたりする。こういうスれて人の垢にまみれた魚というのはたいがい釣れにくいもので、案の定太陽が傾くまではボウズだった。
夕焼けが空に映え、徐々にハッチが活発になり始めた頃、ようやく魚も反応し始めた。ハッチをつぶさに観察し、状況を読んで色んなフライを試す斎藤君に対して、視認性のみを優先してパラシュート・タイプ一本ヤリで通したが、そんなもんはすぐに限界が来る。そこで、斎藤君が一匹釣るごとに「フライは?」と聞き、すぐさま同じフライを結んで投げる、という合理的かつ恥知らずな戦法に切りかえた。自分の持っていないフライで釣りやがった場合「え、それどんなタイプ?」と言ってフライ・ボックスを覗きこみ、遠慮なく強奪するのだ。なにしろ、今、目の前で魚が食いついたというのは重要な現実であり、実績のあるフライは自身を持って「使い切る」ことができる。 魚のアベレージ・サイズが一回り小さい事もあって、シルバー・クリークでは、4番ライン、ティペット7X、というヘンリーズ・フォークよりも繊細なタックルでの釣りになった。ここでもやはり最優先されるのはドリフトで、わずかなドラッグでも魚はまったく反応しなくなる。「マッチ・ザ・ハッチ」に関しても「分単位で食べる虫が変わる」という話はどうやら本当のようで、二日や三日通った程度ではとても対応しきれるものではない。それでも何尾かのグッド・サイズをキャッチし、初日はどうにかボウズをまぬがれた。
深夜12時過ぎにモーテルに辿り着き、簡単な食事を済ませると次にやってくるのは睡魔なわけで、部屋に入った途端シャワーも浴びずにベッドに直行したくなる。しかしさすがは斎藤君、並の釣りバカではない。ストマック・ポンプで採取した水生昆虫を分類し、観察し、間接照明の灯りの下で次々とフライを巻いていくのである(フライを巻くのもやはり速い)。これこそが真の釣りキチであり「明日のためにその1」ってやつだよな〜と思いながら、深い眠りにつく篠塚でした。 |
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